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新潮文庫
旅のラゴス
筒井 康隆 460円(税込)

日本のSF、というか文芸の巨匠、筒井康隆氏の「旅のラゴス」。
私はSF小説が好きで、過去読んだもののレビューを書こうと思ったのですが、一番に思い浮かんだのがこの作
品でした。

作者はもちろん有名であり、名作、代表作が多数あるのですが、なんとなくこれを書きたくなったのです。
実はタイトルからして何となく読む気がしなかったので、買ってから1年くらい読んでなかったのですが・・・
ドタバタやブラックユーモアも書ける作者ですが、こういった感じのものも書けるのか、と本当に感動しました。

ストーリーは、ラゴスという男が旅をする、というタイトルのまんまなんですが、
そこで「出会い」と「別れ」を繰り返します。
ラゴスは持ち前の素直さ、実直さで人気になり、その知識から博士のように扱われたり王様のように扱われたりします。
辛い境遇になったり、素晴らしい境遇になったり。
欲にとらわれていない、研究肌のラゴスはそれらの状況を照れたりしながら過ごします。
話はラゴスの青年時代から老人になるまで。リズミカルであり、とても読みやすい文体です。

世界観は超能力があり、ファンタジーのような感じなのですが、それを全面に出さず、端々で感じることで世界が出来上がっていきます。
不思議と読み終わるころには「懐かしいあの世界」みたいな雰囲気が残ります。

この作品のレビューを書きたいと思った要因は「読後感」。
これはネタバレになってしまうので書きませんが、読み終わった後、不思議な充実感が包み込む感じです。
彩流社
DIY感覚でわが家をつくる―後悔しない家の建て方・育て方
中村 一朗 1995円
現役の一級建築士で設計事務所の所長である中村一朗氏の「DIY感覚でわが家を作る」。
読む前はHowTo本か、と思っていたのですが、現場を体験した建築士の本音から建設業界を垣間見るような作品です。

4章構成で書かれています。

第1章は近年話題になっている耐震偽装問題、そして建築に纏わる問題を建築士の本音で書かれています。
大企業に属していない、フリーランスの設計屋だから書ける本音、みたいなものが見えます。
これから家を作りたい、買いたいという人は読んでおくといいかもしれません。
昨今、下手に恐怖を煽るだけの「情報本」が多い中、「正しい情報との向き合い方」という基本を感じることが出来ます。
ここで驚いたのが、マンションの階数により値段の考え方がだいぶ違う、ということ。
単純に入れる世帯数が多くなるから全体で割れば安くなる分、高層マンションの方が割率はいいんだろうなーと思っていたので、こういう「自分の知らない業界」の本音がわかるのは面白いです。

第2章は一級建築士なのに現場作業員をやる、という実体験の話。
自分の設計とは無関係、本当に「職人の手下」としての現場作業員を生で体験した話です。
職人の世界をわかりやすく紹介しています。びしっとした縦社会であり、そこにプライドをもった職人が居る。
舞台は建築業界ですが、他の業種も見習うべき内容な気がします。

第3章は古い民家の再生の話。
ハクビシン(狐のようなサイズの動物)が出入りする、ということで呼ばれた作者が、古い民家を手直ししていくうちに色々な発見をする、というもの。
すでに失われている技術や技巧を調査や「推理」しながら直していきます。
床を引っぺがすと井戸が出てきたり、構造上意味のわからない巨大丸太がぶら下がっていたり。
ある種ミステリーの感覚すらある話です。
昔の人の知恵、そして時代とともに変わっていった建物。その場に人が住んでいる「住まい」だからある発見なんだと思います。
それにしても話に出てくる築200年の萱葺き(かやぶき)や土壁の家は、見てみたい気がします。

恐らく、この2,3章で出てくる話が作者が書きたかった内容なんでは、と思います。

第4章では自分で家を作る人、買う人に向けたメッセージのような話。
建築基準法なども織り交ぜながら分かりやすく、リズミカルに説明しています。

一級建築士という資格はビルもマンションも、巨大な橋すら作ることの出来る日本で最高の建築資格。
建物が多岐にわたる上、構造設計など分野も細分化してきている現在。
民家やアパート、マンションに多く携わった作者の「本音」で書かれた本だと思います。

内容は難しいものではなく、面白おかしく書かれているので、気軽な感じで読めるお勧めの一冊です。